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どうにも読めない地名「保栄茂(びん)」のフシギ

□どうにも読めない地名「保栄茂(びん)」のフシギ

□方言やひらがなに漢字をあてた沖縄の地名それでもわからない保栄茂という地名

 

 沖縄の地名はよみにくいものが多い沖縄に住んでいる私でも、なんと読むかわからない地名もあるので内地の人で沖縄各地の地名が読めるという人がいれは、その人はかなりの沖縄通であるといってもいいだろう。ここにいくつかの地名を挙げてみよう。

[入門編(沖縄本島の地名)]
□南部:南風原(はえばる)、具志頭(ぐしちゃん)、与那原(よなばる)、糸満(糸満)
□中部:具志川(ぐしかわ)、金武(きん)、北谷(いやたん)、中城(なかぐすく)
□北部:本部(もとぶ)、大宜見(おおぎみ)、今帰仁(なきじん)、国頭(くにがみ)、

[中級編(無理すれば読めなくもない地名)]
・沖縄市の越来(ごえく)、・玉城村の仲村渠(なかんだかり)、・佐敷町の手登根(てどこん)、・具志川市の兼箇段(かねかだん)、・名護市の我部祖河(がぶそか)・東村の慶佐次(げさじ)、

[上級編(まったく予測があつかない地名)]
・豊見城(とみぐすく)村の保栄茂(びん)、・浦添市勢理客(じっちやく)、竹冨町の南風見仲(はいみなか)、

 どうしてこのような独特な地名がついたのだろうか。

 まず、話しておかなければいけないのが、かつて沖縄が古琉球といわれていた時代は、ひらがな表記が主流だったこと。1609年の島津侵入以後、検地帳の作成が行われ、これによって漢字表記が主流になったのだが、その際、どの文字を使うかが決められていった過程は地名によってさまざま。ひらがな表記から音が拾われ、そのまま漢字をあてたものもあるし、まったく読みと漢字表記の関連性がうかがえないものもある。また、ひらがな表記に関係なく、方言の発音に漢字をあてていったものもある(注:ひらがな表記の音が、当時、実際に呼ばれていた地名と同じとは限らない)。

[方言の発音の漢字があてられた地名]

「南風原」はかつてから方言でフェーバルまたはヘーバルと呼ばれている。「フェー」とは南を意味する言葉。この地名は首里城の南に位置するところからつけられた。「南」と同じ意味で使われる言葉に「南風」があり、これにハル(バル)と読む「原」をつけたと考えられる。

[ひらがな表記に漢字があてられた地名]

12世紀から17世紀にかけて王府で編纂された『おもろさうし』という沖縄最古の古揺集がある。これには沖縄各地の地名が、ひらがな表記で登場する。そのひとつが、「くしかわ」現在の「具志川」
である。具志川は方言ではグシカーまたはグシチャーと呼ばれているが、前述の「南風原」と異なり、こちらは発音されていた音ではなく、ひらがな表記に漢字をあてはめたことがわかる。

 これと同じことが、読み方上級編に登場した「保栄茂」にいえる。保栄茂は『おもろさうし』では「ほえも・ほゑも」と表記されている。ただ、ここで問題なのが、よみかたが「びん」であるということ。ひらがな表記はもちろん、漢字表記もどうやっても「びん」とは読めない。この地はかつてから方言でビンと呼ばれていたので、音と表記が独立して成り立ってしまったのか?
 (沖縄ナンデモ調査隊 沖縄のナ・ン・ダ!? 著者:沖縄ナンデモ調査隊 発行所:株式会社双葉社)

 

 

 

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