るふさと
上毛かるたに「鶴舞う形の群馬県」と言うのがありますが、大きく羽をひろげて飛んでいる鶴の胸のあたりが、私の故郷、前橋市です。昭和三十六年に市に合併されましたが、私が子供の頃には、稲や麦を作り、養蚕をする農村地帯でした。
日本一長い赤城山の裾野が、まだ続いている南側の村で私は育ちました。田植えの準備のために、水門が開かれ麦刈りの終わった田んぼに上から順々に水が張られるときは、それは勇壮で、子供心をわくわくさせたものです。やがて代掻きも済み、鏡のように静かな水面に夕日を映している田んぼを「まるで海みたいだ。」と、うっとりして眺めていました。
ーこの時は、まだ本当の海を知りませんでした。ー
また部落の東側は雑木林や、桑畑が続いていました。桑の実を取ったり、栗やきのこをさがしたり、いつも日の暮れるまで遊び回っていました。杉の大木に囲まれて、昼間も欝蒼としている村の共同墓地の前を、全速力で走り抜けた時の恐怖(どきどきして)昨日の事のように思いますが、あれから五十余年(半世紀)以上も経ちました。今では、年一、二度の帰省の度に、信号機のついた広いアスファルトの道路や、団地のスーパーマーケットの間を、まるで浦島太郎の心境で、見覚えのある風景を探し歩いています。
(赤嶺岩子 設計同人GAN)
■写真上 上毛かるた
この「上毛かるた」は日本の将来をになう小さいかたが、 その郷土群馬県をよく知り、そして郷土を愛するようになっていただきたいために作ったものです。
発行所 財団法人群馬文化協会 前橋市紅雲町2丁目1-9
■写真左 早春の赤城山は花盛り 写真集群馬「帰郷」より
■写真右 赤城山遠望 写真集群馬「帰郷」より
写真集群馬「帰郷」
発行 群馬県 前橋市大手町一丁目1-1